2022年1月2日。
コロナ禍のお正月。東京は閑散としていた。
ちょっと前まではクリスマスツリーが飾られていた場所が、門松に変わっていた。
私にとっては、どこか非現実的な光景だった。
なんでこんなお正月に、私は一人でこんなところを歩いてるんだろうか。
さっきまで実家で猫を膝にのせながら、おせちを食べていたのに。
今日の検査でようやく採卵日が確定した。
29日に採卵できるのかも、と期待していたが、1月4日の採卵となった。
私の卵胞は育つのが遅いのだろうか。
結局、最終チェックで見えた卵胞は3つ。
見えている卵胞3つすべて、将来使える卵子になるとは限らない。
そもそも、卵胞の中に成熟した卵子があるかも分からない。
未授精卵子を凍結できたとしても、融解した際に、破損しないとも限らない。
確率低すぎでしょ。
子供産むのって本当に奇跡なんだなぁ…と診察を終えて、私はとある場所へ向かっていた。
そう、昨日連絡をした相手と会うためだ。
私には、”なんでも話せる存在”の異性がいた。
十数年の付き合い、一緒にいて気が楽、という相手だ。
私が東京から離れてからも、連絡は取り続けており、治療のために上京していることも伝えていた。
ランチを食べながら、低AMHの話であったり、今日の診察結果を話した。
「未授精卵子を凍結する確率より、受精卵にした方が…」
そこまで話したたけで、
「俺の精子使うか?」
という言葉がさらっと返ってきた。
正直、驚かなかった。
この人なら、そう言ってくれると思っていた。
それくらい、お互いの考えていることは昔から分かっていた。
そう言ってもらったものの、私は、
「ありがとう。その時が来たら、またお願いする。」
と答えた。
精子提供者が決まったものの、どうクリニックに言い出したらいいのか。
その先の流れはどうなるのか。
何一つ分からなかった。
今思えば、相手もよく何も知らずに引き受けたな、と思う。
ただ、私は、これで受精卵を凍結できる。
受精卵さえ凍結ができたら、あとは移植をして、妊娠。
当時の私は、本気でそう思っていた。
本当に甘い考えだったと思う。
